こんにちは、ファイナンシャルプランナーの宮原健治です。
1級FP技能士とAFPの資格を持って、20年以上、個人のお金に関する相談に乗ってきました。
銀行員時代を含めると、もう25年ほどになります。
ここ最近、相談の現場で本当によく聞かれるテーマがあります。
「純金積立とNISA、どちらを先に始めたほうがいいですか?」というご質問です。
特に去年の秋から年末にかけて金価格が一気に上がり、ニュースで取り上げられる機会が増えてから、明らかに増えました。
ご質問の中身を聞いていくと、半分くらいの方が両方を「ライバル」のように比較しています。
結論からお伝えします。
純金積立とNISAは、そもそも別物です。
「どちらか」ではなく、「どう組み合わせるか」を考えるべき仕組みです。
そのうえで、私が個人的にも顧客にもよくお勧めしている順番と、その理由をこの記事でじっくりお話しさせてください。
私自身、純金積立はもう10年以上続けています。
相場が上がった局面も下がった局面も、自分のお金で体験してきました。
そのうえで申し上げる「現役FPの本音」として、参考にしていただけたらと思います。
Contents
1. 私の結論:先にNISA、そのうえで純金積立をサテライトに置く
最初に、もったいぶらずに結論を書いておきます。
私の答えはこうです。
- まずNISA(特に新NISA)の枠を、自分の家計でできる範囲で埋めにいく
- そのうえで、生活防衛や資産分散の観点から、純金積立を資産の5〜10%程度組み込む
これが、相談現場で20代から60代まで幅広い方にお伝えしている、私の標準的なアドバイスです。
なぜNISAを先に置くかというと、シンプルに「非課税メリットが強すぎるから」です。
2024年以降の新NISAは、年間最大360万円、生涯で1,800万円という大きな枠を、しかも無期限・恒久制度として使えます。
これは、過去のどんな税制優遇よりも個人投資家に有利な制度です。
使える枠を残したまま、税金がかかる純金積立に先に資金を回すのは、家計の効率から見るともったいない。
では、なぜそれでも純金積立を「やらなくていい」と言わないのか。
ここが、私が10年やってきた経験から強く感じている部分です。
純金積立は、リターンを稼ぐ投資というより、「持っているだけで安心できる、家計の地震保険のような存在」です。
攻めの資産(NISAで運用する株式・投資信託)と、守りの資産(純金積立)は、役割が完全に違います。
役割が違う以上、優先順位はあっても、択一にする必要はありません。
2. 純金積立とNISAは「比較対象」ではない、別の役割を持つ仕組み
ここからは、なぜ「比較対象ではない」と私が言い切るのか、もう少し丁寧に整理していきます。
制度の目的がそもそも違う
純金積立とNISAは、見た目こそ「毎月コツコツ積み立てる」点が似ています。
ですが、根本の設計思想が違います。
新NISAは、金融庁が主導する個人の資産形成支援の「制度」です。
株式や投資信託といった有価証券への投資を、税制優遇で後押しするのが目的です。
一方の純金積立は、金という実物資産を少しずつ買い溜めていく「商品」です。
資産形成支援の制度ではなく、商品そのものです。
非課税メリットはありません。
つまり、片方は「税制」、もう片方は「商品」。
そもそも比較する土俵が違います。
表で違いを整理する
ざっくりですが、両者の違いを表にしました。
| 項目 | 新NISA | 純金積立 |
|---|---|---|
| 制度の根拠 | 金融商品取引法・税制優遇 | 商品の積立購入契約 |
| 対象資産 | 株式・投資信託・ETF・REIT | 金(実物) |
| 売却益への税金 | 非課税 | 譲渡所得として課税 |
| 年間積立額の自由度 | 360万円まで | 各社の契約による |
| 価格変動の特徴 | 株式と連動しやすい | インフレ・有事に強い傾向 |
| 流動性 | 高い(即日売却可能) | やや低い(解約・受取に手続き) |
| 配当・利息 | あり(投信・株により) | なし |
| 主な目的 | 資産形成・老後資金 | 資産分散・インフレ対策 |
こうして並べると、見るべきポイントが違うことが伝わると思います。
3. 新NISAは資産形成の土台として優先すべき3つの理由
NISAを「先に」とお勧めする理由を、もう少し具体的にお話しします。
強く言い切りますが、ここを使わないのは家計にとって明確な機会損失です。
理由1:年間360万円・生涯1,800万円の非課税枠は強力すぎる
新NISAは、つみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円の合算で、年間最大360万円まで投資できます。
生涯では1,800万円が非課税で運用できる枠として用意されています。
金融庁のNISA特設ウェブサイトに制度の全体像が整理されていますので、詳細はそちらをご覧ください。
通常、株式や投資信託の売却益・配当には20.315%の税金がかかります。
それがゼロになります。
100万円の利益が出たら、約20万円が手元に残るかどうかの違いです。
数年単位で見れば、十数万円から数十万円の差になります。
これを使わない手はありません。
理由2:制度が恒久化・無期限化されて長期戦略が立てやすい
旧NISAは期間限定の制度でしたが、新NISAは恒久化されました。
非課税の保有期間も無期限です。
これが何を意味するかというと、「20年30年の長期で運用設計が立てられる」ということです。
退職金まで考えた長期プランを組むときに、制度の終了期限を気にしなくていい。
プランを組む側からすると、本当に大きな進歩です。
理由3:売却すれば翌年以降に投資枠が復活する
新NISAでは、保有商品を売却すると、その買付額分の非課税枠が翌年以降に復活します。
旧制度になかった重要な変更点です。
途中でライフイベントが発生して資金が必要になっても、売って現金化できます。
そのうえで、また落ち着いたタイミングで枠を埋め直せます。
この柔軟性は、家計運営をしているご家族にとって本当に助かるポイントです。
4. それでも私が純金積立をやめない4つの理由
ここまで読んで、「じゃあ純金積立は要らないのでは?」と感じた方もいるかもしれません。
それでも私は、自分の資産の一部に金を入れ続けていますし、相談者にもよくお勧めしています。
理由を4つ挙げます。
理由1:株式と異なる値動きをする「資産の地震保険」
金は、株式や債券と値動きの相関が低い資産です。
株が下げているときに金が上がる、ということが起きやすい。
特に、金融危機や戦争のような有事には、株式が大きく下げる横で金価格が逆に上昇する傾向があります。
2020年のコロナショックや、2022年のウクライナ情勢でも、株と金は逆方向に動きました。
ポートフォリオに金を組み込むのは、家計に対する「地震保険」のような意味があります。
保険ですから、平時は出番がなくていい。
ただし、いざというときに資産全体を守ってくれます。
理由2:通貨価値が下がる局面の防御力
円安やインフレが進むと、円で持っている資産の実質的な価値は目減りします。
金は世界共通の価値を持つ実物資産なので、通貨価値の下落に対して防御力があります。
実際、ここ数年の円安局面では、円建ての金価格が大きく上がりました。
2025年初頭は1g約15,000円だったところから、年末には2万円台へ。
2026年に入ってからも史上最高値圏を更新しています。
最新の金価格推移は田中貴金属工業の金価格情報ページで確認できます。
ここは毎日の店頭小売価格・買取価格が公開されていて、私も日課のように見ています。
理由3:実物資産は精神的な安心材料になる
これは数字に出てこない話ですが、地味に大事です。
株式や投資信託は、画面上の数字でしか存在しません。
極端な話、システム障害でログインできなくなれば、その日は資産を確認することすらできません。
金地金は、物理的に存在する実物です。
受け取って手元に置くことも可能です。
「すべてをデジタル金融資産で持つことに、なんとなく不安がある」という感覚は、私自身も、相談者の多くも持っています。
そこに一定の現物比率を入れておくと、気持ちの安定にもつながります。
理由4:相続・贈与の選択肢として実物を残せる
金地金は相続や贈与の対象として、現物のまま渡せる資産です。
不動産や上場株式と並んで、世代を超えて残しやすい資産の一つです。
特に50代後半以降の相談では、「子どもや孫に何を残すか」という話になることが多いです。
そのときに、金という選択肢を持っておくと、設計の幅が広がります。
ただし、売却時の税務上の扱いは押さえておく必要があります。
譲渡所得については、国税庁の金地金の譲渡による所得に詳しい解説があります。
具体的には、保有期間5年超なら譲渡益から特別控除50万円を差し引いた残額の半分だけが課税対象。
長く持つほど税負担が軽くなる仕組みです。
このあたりは、相続まで視野に入れる方には覚えておいてほしいポイントです。
5. 純金積立とNISAの併用パターン3つ
「具体的にどう組み合わせればいい?」というご質問が次に来ます。
私が現場でよく提案している3パターンを紹介します。
パターンA:NISA8〜9割、純金積立1〜2割(標準)
一番のおすすめは、このバランスです。
例えば、毎月10万円を投資に回せる方であれば、
- NISA(つみたて投資枠+成長投資枠):8〜9万円
- 純金積立:1〜2万円
という配分です。
NISAを土台にしながら、金を「保険」として一定割合組み込む。
20代から50代前半の方には、まずこの形をお勧めしています。
パターンB:NISA枠を金ETFで一部代替する(手数料・流動性重視)
「実物の金を持つほどの強い動機はないけど、金にも資産を分けたい」という方は、こちらが合います。
NISA口座の中で、金価格に連動する投資信託やETFを買う方法です。
代表例は、三菱UFJ純金ファンド(愛称:ファインゴールド)や、純金上場信託(1540)。
これなら、売却益は非課税ですし、流動性も高い。
手数料も実物の純金積立より抑えられます。
ただし、これは「実物の金」ではなく「金価格に連動する金融商品」です。
有事に証券口座が止まったら触れません。
そこを割り切れる方にはお勧めできます。
パターンC:純金積立を多めにして実物比率を高める(インフレ・有事懸念派)
インフレや国際情勢への警戒心が強い方には、純金積立の比率を上げる選択肢もあります。
私の相談者でも、60代で資産の20〜30%を金に置いている方がいらっしゃいます。
理由を伺うと、「老後はこれ以上の値上がりリスクより、資産価値が目減りする方が怖い」というお考えでした。
ライフステージや価値観によって、ここは正解が変わります。
ただし、純金積立は配当を生まないので、比率を上げすぎると資産全体の成長性は鈍ります。
このトレードオフは押さえておいてください。
6. 純金積立の運営会社を見るときに私が見ているポイント
純金積立を始めるとき、商品選びと同じくらい大事なのが「運営会社選び」です。
お金と金地金を長期で預ける相手ですから、慎重に見るべきポイントがあります。
私が顧客に説明するときに使うチェックポイントを4つ紹介します。
ポイント1:仕組みが明確に説明されているか
純金積立には、定額積立・定量積立・確定型など、複数の方式があります。
各社で仕組みが違うので、「自分が契約している方式が何で、何が確定して何が変動するのか」を明文化しているかは重要です。
公式サイトで仕組みがはっきり書いてある会社は、それだけで信頼度が一段上がります。
ポイント2:許認可・登録番号を公開しているか
金地金を扱うには、古物商の許可が必要です。
これを取得していて、公安委員会の許可番号を公式サイトに記載している会社かどうかは、最低限のチェックポイントです。
業界の健全性については、一般社団法人日本金地金流通協会が業界団体として情報を発信しています。
参考になります。
ポイント3:アドバイザー体制の有無
特に初心者の方には、対面または電話で相談できる窓口があるかどうかも判断材料です。
純金積立は契約期間が長く、家計の状況や相続まで関わってくる商品です。
ファイナンシャルプランナーや相続診断士の有資格者がアドバイザーとして在籍している会社は、長期で付き合いやすいです。
ポイント4:情報発信の透明性
私が個人的に大事にしているのが、ここです。
気になる純金積立会社があれば、公式サイトだけでなく、その会社が出している動画や記事まで一通り見るようにしています。
社長やアドバイザーが自分の言葉でサービスを説明している会社は、それだけで安心感が違います。
例えば、確定型の純金積立「ゴールド積立くん®」を提供している株式会社ゴールドリンクの公式YouTubeチャンネルでは、商品の仕組みや純金積立のメリットを動画で発信しています。
こうした動画コンテンツを契約前に見ておくと、活字の公式サイトだけでは伝わらない、運営側のスタンスや人の顔が見えてきます。
純金積立は10年以上の付き合いになる商品ですから、運営会社の人柄まで含めて納得して契約していただきたい。
これは現場で何度も感じてきたことです。
7. 純金積立を始めるときに気をつけたい3つの落とし穴
最後に、純金積立を始めるときに見落としがちな注意点をお伝えします。
これも実際に相談現場でよく見るパターンです。
落とし穴1:手数料・口座管理費の構造を理解せずに契約する
純金積立の手数料は、会社によって構造が全然違います。
毎月の購入額に対する手数料率で表現する会社、購入代金総額に対する一括手数料の会社、年会費や口座管理費が別途かかる会社。
比較するときは、「年間トータルでいくら払うか」を計算してから判断してください。
特に、金額確定型のように仕組みが他と違う商品は、単純な手数料率では比較できません。
落とし穴2:売却益への課税を忘れている
純金積立はNISA対象外ですから、売却益に課税されます。
保有期間5年超で長期譲渡所得扱いとなり、特別控除50万円を差し引いた残額の半分のみが課税対象になります。
税負担を抑えるには、長く持つこと。
すぐ売る前提で買うものではありません。
落とし穴3:金価格が高騰しているタイミングでまとめ買いに走る
ニュースで金が話題になると、「今すぐ多めに買いたい」という気持ちが出てきます。
これが一番危ない。
純金積立の良さは、価格が上下する局面で少しずつ買って、平均購入価格をならせること(ドルコスト平均法)です。
高値圏でまとめ買いをすると、ドルコスト平均法のメリットが消えます。
「金価格が史上最高値だ」というニュースを見たときこそ、淡々と毎月の積立を続けてください。
8. よくある質問
相談現場でよく聞かれる質問を4つ、Q&A形式でまとめます。
Q. 純金積立はいくらから始めればいい?
A. 各社で違いますが、月3,000円〜5,000円から始められる会社が多いです。
ただし、運営会社や商品によっては最低単位が大きい場合もあります。
家計の中で「無理なく続けられる金額」が一番大事です。
Q. NISAをやっていないけど純金積立から始めてもいい?
A. 順番としては、まずNISAを優先することをお勧めします。
非課税枠を使わないのは、税制面で大きな機会損失です。
NISAをコツコツ積み立てる流れに乗ったあとで、純金積立を追加するイメージで構いません。
Q. 金関連ETFや投資信託をNISAで買うのと、純金積立はどう違う?
A. ETFや投資信託は、あくまで「金価格に連動する金融商品」です。
換金性は高いですが、実物の金そのものではありません。
受け取って手元に置きたい、有事に証券口座が止まっても触れる資産が欲しい、という方は実物の純金積立を選んだほうがいいです。
Q. 50代から純金積立を始めても意味ある?
A. 十分に意味があります。
むしろ、50代以降は資産の守りを意識するフェーズですから、金の保険的な役割が活きやすい時期です。
相続・贈与の選択肢としても有効です。
まとめ
長くなりましたので、最後に要点を振り返ります。
- 純金積立とNISAは比較対象ではなく、役割の違う仕組みです
- 優先順位は、まずNISAで非課税枠を使うのが基本です
- そのうえで、資産の5〜10%程度を純金積立に回すと、家計の守りが厚くなります
- 純金積立の会社選びでは、仕組みの明確さ、許認可、アドバイザー体制、情報発信の透明性を見てください
- 金価格高騰時のまとめ買いは避けて、淡々と続けるのが結果的に有利です
私は10年以上、自分の資産の一部を純金積立で持っています。
派手なリターンを生んだことはありませんが、相場が荒れた局面で「金があるから大丈夫」という安心感を何度も感じてきました。
NISAで攻めて、純金積立で守る。
この組み合わせが、私のお勧めする家計の標準形です。
ぜひ、自分の家計とライフプランに合わせて、無理のないバランスを見つけてください。



