「オール電化の営業って、やっぱりきついんですか?」
キャリアアドバイザーをしていた頃、住宅設備業界を希望する方からいちばん多く受けた質問がこれでした。

はじめまして、キャリアライターの三浦康平です。
20代から30代にかけての8年間、給湯器メーカーの販売代理店で訪問営業と施工の手配をしていました。
その後は人材紹介会社に移り、住宅設備やエネルギー業界への転職を6年ほど支援してきました。

売る側と、人を送り出す側の両方を経験したので、この仕事のしんどさも面白さも見てきたつもりです。
この記事では、きついと言われる理由を一つずつほどきながら、どんな人なら長く続けられるのかを整理します。
入社前に求人票のどこを見ればいいかもまとめたので、転職を考えている方は参考にしてください。

オール電化・省エネ給湯器の営業はどんな仕事か

提案しているのは「機械」より「光熱費の使い方」

扱う商材は、エコキュートなどの高効率給湯器、IHクッキングヒーター、太陽光発電や蓄電池といった家庭用のエネルギー機器です。
会社によっては、外壁やリフォームまで一緒に提案することもあります。

お客さまが知りたいのは、給湯器のスペックではありません。
「毎月の電気代やガス代がどう変わるのか」「今の家に合うのか」という暮らしの話です。

国の補助事業「給湯省エネ2026事業」の事業概要でも、給湯は家庭のエネルギー消費で大きな割合を占める分野とされています。
お湯の沸かし方を変えるだけで家計の数字が動くので、検針票を一緒に見ながら話すと、お客さまの表情がはっきり変わります。

市場も小さくありません。
ヒートポンプ・蓄熱センターなどが2025年4月に出した発表によると、エコキュートは2001年の発売から24年で累計出荷台数が1,000万台を超えました。
同じ発表では、2050年のカーボンニュートラル達成には約3,650万台まで普及を進める必要があるとしています。

同じ商材でも営業スタイルは会社ごとに違う

「給湯器の営業」とひとくくりにされがちですが、きつさの大部分はどうやってお客さまと出会うかで決まります。
私が見てきた範囲では、だいたい次の5つに分かれます。

営業スタイルお客さまとの出会い方きつさの出方
飛び込み営業約束なしで戸別訪問する断られる回数が最も多い
テレアポ型電話でアポを取ってから訪問する電話での断りが続く
反響営業チラシやWebを見た人から問い合わせが来る数は少なく、成約率を問われる
既存顧客訪問機器を入れた家庭をメンテナンスなどで再訪する関係づくりに時間がかかる
分業制アポ取り・ヒアリング・契約を別の担当が受け持つ自分の担当工程の数字を追う

求人票の「営業職」という言葉だけでは、このどれなのかが分かりません。
面接では「最初の接点はどう作っていますか」と必ず聞いてください。

1日の流れのイメージ

私がいた代理店の場合、典型的な1日は次のような流れでした。

時間帯主な仕事
9時ごろ朝礼、その日の訪問先の確認、ロールプレイング
10時〜12時担当エリアへ車で移動し、訪問や商談
13時〜17時午後の訪問、見積もりのための現地調査
17時〜19時共働き世帯への訪問、ご夫婦そろっての商談
19時以降帰社して日報、見積もり作成、翌日の準備

ご家族がそろう夕方や土日に商談が入りやすいので、休みは平日になることが多い仕事です。
そのぶん平日の役所や病院には行きやすく、私はこの働き方が嫌いではありませんでした。

きついと言われる4つの理由

断られる回数がとにかく多い

訪問営業の宿命です。
インターホン越しに「結構です」と言われるのは日常で、私も入社して最初の3か月は、一日の終わりに車の中でしばらく動けない日がありました。

ここで心が折れる人が多いのは事実です。
ただ、断られているのは自分の人格ではなく「今は興味がない」という状況だと割り切れるようになると、ずいぶん楽になります。

私の場合は、断られた理由を手帳に一言ずつ書き残すようにしてから変わりました。
「留守がち」「給湯器を替えたばかり」「家族に相談したい」と並べてみると、自分の話し方の問題ではないケースがほとんどだと分かります。
理由が見えれば、次に訪ねる時間帯や、最初のひと言を変えるだけで済みます。

収入がインセンティブに左右されやすい

この業界の給与は「固定給+インセンティブ」の組み合わせが一般的です。
成約すれば月の収入が大きく伸びる一方、契約が取れない月は固定給だけになります。

求人票で見ておきたいのは次の点です。

  • 固定給のうち、固定残業代が何時間分含まれているか
  • インセンティブの計算方法と、試用期間中に支給されるかどうか
  • 年収例が何年目の、どの役職の人の数字なのか

「年収例」は、上位の数字が載りやすい欄です。
面接で「入社1年目の人の平均はどのくらいですか」と聞くと、実態がつかみやすくなります。

訪問販売への警戒心と毎日向き合う

私がいちばんつらかったのは、断られることよりも、最初から疑いの目で見られることでした。
これには理由があります。

国民生活センターが2024年2月に公表した注意喚起によると、給湯器の点検商法に関する相談は2023年度に1,099件(12月31日までの登録分)にのぼり、前年同期の約3倍に増えていました。
同センターは2025年6月にも、太陽光発電の点検商法の相談が2023年度の304件から2024年度は613件に増えたと公表しています。
詳しくは国民生活センター「給湯器の点検にご注意ください」をご覧ください。

不安をあおって契約を急がせる業者がいるせいで、まじめに提案する営業まで同じ目で見られてしまいます。
だからこそ、ルールを守った営業がいちばんの信頼につながります。

訪問販売には特定商取引法の決まりがあります。
勧誘の前に事業者名と勧誘目的を告げること、断られたら勧誘を続けないこと、法定書面を受け取ってから8日以内ならクーリング・オフができることなどです。
内容は消費者庁の特定商取引法ガイド「訪問販売」にまとまっているので、入社前に一度読んでおくことをおすすめします。

補助金や制度の知識を更新し続ける必要がある

意外と見落とされがちなのが、勉強量の多さです。
機器の仕組み、電気料金プラン、そして毎年のように変わる補助金の内容を、お客さまに正しく説明しなければなりません。

たとえば現在受付中の給湯省エネ2026事業では、エコキュートの補助額は基本額が1台7万円で、性能の要件を満たす機種には3万円が加算されます。
交付申請の受付は予算の上限に達するまでで、遅くとも2026年12月31日までです。
公式サイトのトップページでは、予算に対する申請額の割合は10月29日時点で約54%と表示されていました。

申請は登録された事業者が行う仕組みなので、営業担当の説明ひとつでお客さまの受け取れる金額が変わることもあります。
「補助金でこれだけ安くなります」と言い切る前に、条件と期限を確かめる習慣が欠かせません。

それでも続けられた理由

ここまで読むと、しんどい話ばかりに見えるかもしれません。
それでも私が8年続けられたのは、次のような手応えがあったからです。

  • 導入から半年後に「電気代の請求を見て驚いた」と電話をもらえた
  • 成果がそのまま給与に反映されるので、頑張った分の手応えが分かりやすい
  • ヒアリングと説明の力がつき、転職後もそのまま使えた
  • 朝の訪問計画を自分で組めるので、時間の使い方に裁量があった

いまでも覚えているのが、築30年の戸建てに住む70代のご夫婦です。
古いガス給湯器が冬場にたびたび止まるとのことで、何度か通って話を聞きました。

その場で契約を急がず、ご家族にも相談してもらってから決めていただきました。
工事が終わったあと、奥さまから「お風呂の追い焚きで止まる心配がなくなって、冬が楽しみになった」と手書きのはがきが届きました。
数字の目標とは別に、こういう手応えがあるから続けられたのだと思います。

アドバイザー時代に支援した方を見ても、この業界で3年ほど営業をした人は、住宅会社やリフォーム会社、エネルギー系の法人営業などで評価されやすい印象でした。
お金と暮らしの話を、初対面の相手に分かりやすく説明できる力は、どの業界でも重宝されます。

向いている人・向いていない人

私の経験と、転職支援で見てきた方々の傾向をまとめると次のようになります。

向いている人向いていない人
断られても気持ちを切り替えられる一度の否定を長く引きずってしまう
成果が収入に直結することにやる気が出る毎月同じ額の給与を最優先したい
相手の話を聞いてから提案するのが得意自分が納得していない商品は売りたくない
マニュアルを素直に試し、少しずつ改善できる土日や夕方の訪問がどうしても難しい
数字や制度の勉強が苦にならない運転や移動の多い働き方が合わない

「向いていない人」に当てはまっても、すぐに諦める必要はありません。
分業制の会社ならアポ取りやヒアリングから始められますし、反響型なら飛び込みはほとんどありません。
自分の苦手が、どの営業スタイルなら目立たないかを考えると選択肢が広がります。

入社前に確かめておきたいこと

最後に、会社選びで私が必ず伝えていたチェックポイントです。

  • 最初の接点は飛び込み・テレアポ・反響・既存顧客のどれか
  • 分業制か、1人で最初から契約まで担当するのか
  • 研修の期間と、独り立ちまでの目安
  • 取り扱うメーカーや、代理店契約の有無
  • 固定残業代とインセンティブの内訳

面接で使える質問の例

聞きにくいことほど、言い方を工夫すると答えてもらいやすくなります。
私が転職支援をしていた頃に、求職者の方へお渡ししていた質問例です。

  • 「入社1年目の方は、平均して月に何件くらい契約されていますか」
  • 「研修中はどなたかの訪問に同行する形になりますか」
  • 「お客さまに断られたあと、再訪問のルールはどう決めていますか」
  • 「補助金の申請は、営業担当と事務担当のどちらが行っていますか」

3つ目の質問への答え方を聞くと、その会社が特定商取引法をどれだけ意識しているかが見えてきます。
「断られたら無理に追わない」とはっきり答えてくれる会社なら、長く働きやすい環境だと私は考えています。

具体例:分業制をとる会社

具体例として、東京都中央区に本社を置く株式会社エスコシステムズを挙げておきます。
同社はENEOSサンエナジーの販売代理店一覧に名前が載っている会社です。

自社の採用ページによると、太陽光パネルをすでに設置している家庭を訪問し、アポイント取得、ヒアリング、契約の3つに担当を分けた分業制をとっています。
契約が決まると、その案件に関わったアポイント担当やヒアリング担当にもインセンティブが出る仕組みで、営業職の約半数が未経験からのスタートだそうです。

ひとりで全工程を背負わずに済むので、私が新人の頃にこの形があったら、最初の3か月はもう少し楽だったと思います。
過去の募集内容や研修の流れは、エスコシステムズの求人情報をまとめたdodaの企業ページで確認できます。
同じ業界の会社を比べるときの物差しとしても使えます。

まとめ

オール電化・省エネ給湯器の営業がきついと言われる理由は、大きく4つです。

  • 断られる回数が多い
  • 収入がインセンティブに左右されやすい
  • 訪問販売への警戒心と向き合う
  • 補助金や制度の勉強が欠かせない

どれも本当のことですが、どの程度きついかは営業スタイルと会社の仕組みで大きく変わります。
ルールを守り、お客さまの光熱費の悩みに丁寧に答えられる営業は、今の時代にこそ必要とされています。

迷っている方は、まず求人票の「最初の接点」と「給与の内訳」を確かめるところから始めてください。
そこが分かれば、自分に合う会社かどうかはかなり見えてきます。